い ろ な ぶ り

tsubaki rocka
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白雪姫 


  昔々、わたしたちのおばあさんの、そのまたおばあさんのおばあさんのころのお話かも
しれません。あるところに、静かな森と澄んだ湖に囲まれた美しい土地がありました。

 領主様は強く聡明で、次に領主様になる若様は美しく、立派な青年でした。
 23歳になる若様には、7つ年下の可愛いお嫁さんがいました。
 誰もがうらやむ、雪のように白く透き通るような肌に、冬の闇夜のような深い漆黒の髪。
微笑めば頬に春の花が咲き、その唇はまるで血のように鮮やかで、若様はたいそうお気に
入りでした。
 人目見れば誰もが虜になってしまうそのお嫁さんは「白雪姫」と呼ばれていました。

 若様は白雪姫を、それはそれは愛していました。白雪姫も若様を愛していました。
二人は仲睦まじく、二人並ぶ姿は屋敷に仕える者たちの羨望の的でした。


 若様が春の森から幼い白雪姫を連れて屋敷へ帰ってきたのは、8年前のことでした。
 少女だった姫はいつしか美しい女性へと変わり、深い悲しみと戸惑いを映していた瞳は、
愛と幸せの瞳へと、輝きを変えてゆきました。
 若様は、今でも幼い姫の可憐な姿を思い浮かべ、懐かしんでいました。

 若様は白雪姫を初めて見た日のことを、きっと一生忘れなかったでしょう。

 
 若様の心には、今より白く血の気のない、幼い白雪姫の細い足首が焼き付いていました。



 「かがみよかがみ、かがみさん。この世で一番美しいのはだあれ」
 白雪姫はお母さんがよくやっていたと言い、時々鏡にむかって声をかけました。
 もちろん鏡は答えなど返してはくれませんし、白雪姫も答えのないのはわかっていました。
 それでも白雪姫は鏡に声をかけました。特に、若様がでかけて帰ってこない日などは日に
何度もこの不思議な言葉を鏡に投げかけました。
 そして若様の帰らない日は決まって、その美しい顔を鏡にうつしながら首をかしげて、
不思議そうに自分の顔を眺めるのでした。

 「白雪姫、世界で一番美しいのはお前だよ。」
 領主様は首をかしげる白雪姫に、いつも優しい言葉をかけてやりました。
 白雪姫は領主様の言葉を聞くと、とても安心することができました。

 「白雪姫、お前は本当に美しい。息子は世界で一番の幸せものだよ」
 白雪姫は優しい領主様が大好きでした。




つづく


| 椿六花 | ものがたり | 12:54 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |









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